Diary of a Madman

癲狂院に置かれた或る一冊のノートブック
狂気の記憶が焼き付いた、深淵なる倒錯の記録の数々。

美術/絵画 アーカイブ
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 嵌まっていた....というよりは資料集めをしていたのが高じての結果なのですが、神話や悪魔、それに魔術関係についての資料を、5〜6月の2ヶ月余りに渡り漁っていました。これは少し前に書きましたが、ラストバイブルファンサイト「ルシフェリウム」のサイトデザインのためでした。


 それなりに悪魔や堕天使に関する本は持っていましたので全く知識がなかったわけではありませんし、今までの雑記などでも度々話題にしてきました。「ルシフェリウム」のデザインの大きな要素となったのが、天使像、ルシフェルの紋章、召還呪文の3つです。今回は一番時間を掛けて苦労した、天使像について。


天使像といっても例えばガブリエルのような伝達係系天使よりも武装している天使の像を必要としていました。なにせルシフェリウムですので力強くないといけません。調べてみると、天使像といえば子供の天使や女性の天使はすぐにみつかるのですが、武装している天使はそれらと比べるとずっと少なくて本当に苦労しました。 よくよく考えてみると武装している天使で有名なのはミカエルくらいなんですよね。

 まあともかくグーグルのイメージ検索で、まず「angel statue」辺りで一通り時間を掛けてチェックして、それで気になった天使像が3つ見つかりました。


 1つは、次のサイトのページ上部に載っている天使像。 http://216.254.31.219/lucite/lucite.asp   この天使像、あるCDジャケットに描かれているものに似ている様に思うんです。なので意外に有名な天使像なのではと思っているのですが、グーグルのイメージ検索では見つからないし、作者や名前も分からないのでお手上げです。ちなみにそのCDジャケットは、TNTの「TILL NEXT TIME」。以前当雑記で紹介したこともあるCDです。このジャケット裏には顔の部分をアップしたものがあって、それと見比べるとやっぱり似ている気がするんです。同じ巻き髪、ティアラ、ポーズ.....CDジャケットの方は手描きのような感じですので、推測ですが天使像を参考に描いたのではないかと..........。大きな画像はこちらで。http://homepage.mac.com/jreffner/Artwork/tnt/till_next_time.jpg 

.......似ていません?どなたかご存知の方いらっしゃいましたらぜひお教えください。かなり気になって仕方がありません。この女神風の天使に萌えです。

 結果的にミカエル像にしましたが、この天使像を見つけて、これの無料で使える写真を探そうと当初は考えていました。ラストバイブルも1と2はサブタイトルが「女神転生外伝」だし、1にはフォースの女神も登場していたのでかなり雰囲気も似ているし、それでいこうと思っていたのですが、前述通り詳細が分からないので諦めました。


 2つめはこの天使像  http://binturong.us/pics/brighton/angel_statue_closeup-big.html
どうやらこの天使の詳細は分かりました。イギリスのブライトンにある像.....らしいです。 http://americanairlines.wcities.com/en/record/,214065/202/record.html

 オーブを左手に手にしているので、これもラストバイブルのルシフェルに通じるところがあったので候補でした。ラストバイブル1ではルシフェル達が魔獣達を救う為にオリハルコンを奪うのですが、海外版ラストバイブル=「REVELATIONS: THE DEMONS SLAYER」には、オリハルコンが「Orb」と書き換えられています。聖書などにも登場する球体の宝玉です。音響機器/レコードメーカーの「フィリップス」や、元はパンクファッションのブランドだった「ヴィヴィアン・ウエストウッド」もロゴにオーブが使われていますね。
 断念したのはフリーの写真を見つけられなかった事です。先ほどの大きな画像のアドレスは個人撮影のものですし、使うわけにはいきません。もしかしたらメールで使用許可を求めれば承諾してくれる可能性もあったかもしれませんが......。


 3つめは、ルシフェリウムのトップに決めた天使像。
剣をかざし表情も憂いのある様な或いは何かを見詰めている様な、そんな表情でしたし、ポーズもよかったし男の天使でしたので、これ以外に似合う像はないと即決。ヒット数も多かったので詳細もすぐに判明。イタリアのローマにある「サンタンジェロ城」というお城でした。

サンタンジェロ城 - Wikipedia

 日本語で訳すと、そのまま天使城なんですね。.............ルシフェリウムにこれほどぴったりなものは他には本当にありません。ルシフェリウム...ルシフェルを筆頭に堕天使の棲む魔城......ミルトンの「失楽園」に出てくるパンデモニウムのようなものです。
 サンタンジェロを調べてみると、城の手前に架かっている橋の欄干にはそれぞれ武装した天使像が違ったポーズをとっています。剣、メイス、槍、十字架を武器として握っています。サンタンジェロ城に立っている天使はミカエルでしたから、橋で構えている天使達にもそれぞれ名のある天使なのかもしれませんが、そこまでは調べられませんでした。

...........サンタンジェロ.......こんなお城(遺跡)があるのを知らないなんて不覚でした。Wikipediaの日本語ページに載っている位ですから有名なのでしょう?  検索ワードを「Castel Sant'Angelo」に切り替えて再びイメージ検索。すると.......何と嬉しい事にフリーで使える写真があるではありませんか! .......もう運命だと思いました。(ぉぃ


 そういう経緯でやっと天使像の写真が決まり、サイトデザインの制作を始められました。トップページのそのことだけで2週間くらい掛かっていました。トップページはサイトの顔ともいえる存在ですので時間を掛けます。トップページを各ページに流用した方が手間も省けますし、デザインの統一感も出てきますので、やはり重要です。 ミカエル像はトップページのみにしようと思っていたので、各ページページ左側にはメニューを配置していたのですが、その部分の背景に、橋の欄干に立っていたメイスを握る天使像を載せる事にしました。


 他にも、堕天使の像などもいろいろ見つかりキープしたものもあります。彫像に限らなければ絵画でも気になる絵も見つかりましたし。その中で特に見つけて良かったと思ったのは、ミカエルが描かれた絵画のうちの1つに。グイド・レーニが描いた絵だったとは......びっくりでした。

 グイド・レーニはたぶん日本ではマイナーな画家なのだと思いますが、海外ではけっこう人気があるとか耳にした事があります。また当時はラファエロの再来ともいわれ、近年の古典絵画の再評価と共に本来の評価になりつつあるそうです。テレビ番組の「美の巨人たち」でも前に取り上げていましたが、「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」が、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」とどこか似ていて、もしかしたらフェルメールがそれを参考にしたとか..........番組(下記ページにも書かれています)で紹介されていました。

 詳しくは下記に載せたページに書かれていますが、ベアトリーチェが実の父親に関係を求められ、それに耐えきれなくなり殺害してしまった罪で処刑されたのですが、その場所が、前述のサンタンジェロ..............。

グイド・レーニ「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」
http://www-cvr.ai.uiuc.edu/~slazebni/personal_page/scrapbook/paintings/beatrice_cenci.jpg

フェルメール「真珠の耳飾りの少女」
http://www.ibiblio.org/wm/paint/auth/vermeer/i/earring.jpg

EPSON〜美の巨人たち〜: グイド・レーニ「ベアトリーチェ・チェンチの肖像」
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/picture/f_041218.htm

† 01:09 | トラックバック | Topへ▲ †

 去年の今頃に下書きしてそのまま放置(未公開のまま)していました。
以下その時のまま

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 普段、ウニクロ(ごめん、なぜかそう読んでしまう......)で買うものといったら家で着るものか、インナーくらいなのですが(ごめんなさい)、この間たまたま処分品のワゴンを見てみたら、アンディ・ウォーホルなどの作品をプリントしたTシャツがたくさんあって、思わず漁ってしまいました。

 そんなコラボTシャツを売っていたことは知っていましたが、その時は、ふ〜ん...という感じで、特に気に留めていなかったのです。もともと現代アートはそれほど好みでもなかったので。 でも、処分品を漁っていたら、(アンディ・)ウォーホルのキャンベルスープのプリントのものがあって、ネタにはよいかもと思い他にもないかなと漁っているうちにだんだん嵌まっていってしまって.......。w  ワゴンの中を必死に漁っている姿は、端から見たらちょっと危ない人だったかも.......。

キャンベルスープは、ウォーホルの作品の中でも(モンローのシルクスクリーンなどと同じく)有名な代表作の1つです。

 漁っているうちに、おっ、っと思ったのが、「Compositions」と書かれているノート風の柄のもの。そのノートの柄が素敵で、黒地に白色プリントのモノトーンが気に入ってしまい、誰のだろうと思ったら、リキテンシュタインの作品のようでびっくり。リキテンシュタインというと、アメリカのコミック風の作風で、どう見ても同じアーティストのものとは思えない柄でした。とにかくこれも即決。

ここに載っているのがその柄。ちなみにこのノートには名前を記入する欄まであったりします。w 実際このシャツに名前を書ける強者はないでしょうが。
http://www.artnet.de/magazine/reviews/kletke/kletke08-24-05.asp


 値段も値下げしてあって1枚700円くらいだったので、ついつい他にも、「おっ、これはっ」とか「うわっ」とか言いながら、漁っていた自分が...........恥ずかしい。


 ユニクロはいろいろな分野とのコラボ商品を出していますが、前に、楽器メーカーのロゴをプリントしたTシャツを売っていた時があったのですが、ご存知の方います? あれを知ったのが、もう販売終了後だったのですごく悔しかったです。あわててサイトを見るとまだ商品のリストが載っていて、MXRとかジムダンロップとか....楽器やらない人には分からないだろうメーカーがたくさんあって..........だから逆に楽器をやっている人には嬉しい商品でした。
 なんでもそれぞれメーカーの説明がついていたようで、MXRには、「ランディ・ローズが(distortion+を)使っていた事で有名な..........」というような感じに書かれていたとか。

 是非とも手に入れたかったね..........。

まあそれはもう仕方無いけど、今回の掘り出し物には満足出来たしなかなか良かったです。

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.........というわけで、ユニクロに限った事ではないのですが、探すと良いものがあったりしますね。
ブランドとか値段に関係無く選んで買っているので、時々そういうことがあります。ユニクロ以外だと、うちの地方だとアベイルとか。開店したてのアベイルへ行ったとき、なんか田舎のヤンキー臭い感じのとか多かったので、ここはダメかも.....と思っていたのですが、時が経つにつれてそういうのが少なくなって、けっこう気に入るものが見つかる様になりました。ユニクロは.....無地が多いので、やっぱりインナーとか下着類になってしまいます。でもユニクロの靴下は、なぜかすぐ伸びるので参ります。

 ユニクロでの他の掘り出し物っていうと、傘です。暗めのワイン色の無地の傘で、柄の部分は木製で骨は黒の金属で、すごくシックというか高級感のある雰囲気でお気に入り.........でした。いや、今も時たま使う事もあるのですが.......ちょっと穴を開けられてしまって。たぶんタバコの火による穴だと思うのですが、いつのまにか開けられていて、すごいショックでした。同じ様な傘がまた売られないかな...なんて思いつつお店を覗いたりするのですが.......ないですね。。・゚・(ノД`)・゚・。

† 09:42 | トラックバック | Topへ▲ †

 ........書こう書こうと思いつついつのまにか2年も経ってしまいました。

 ロートレック〜葡萄酒色の人生〜(直リンだとトップに移動してしまうのでコピペで)
http://www.biograf.cz/filmy/1999/02/lautrec/index.html
  という映画についての感想を交えつつロートレックについて書こうと思っていたのですが、感想をうまくまとめられず下書きのままいつのまにか放ったらかしにしてしまいました。とはいっても相変わらずの事、たいしたことは書けないのですけれど。


 この映画は、ほとんどロートレックの生涯を綴った内容になっていますが、見た後調べたところではスポットとして当てたのはシュザンヌ・ヴァラドンとの恋愛だったようです。ロートレック、ヴァラドン共に画家で、ロートレックは死後になって人気が高まり、ゴッホの様に破滅的な画家としても有名です。ヴァラドンは同じく画家のユトリロの母親として名が知られていますし、同時期の画家のルノワールやドガのモデルを務めていました。この映画の内容がどこまで事実に基づいているのか詳しくは分からないのですが、手持ちの画集の解説やネットで調べた情報と照らし合わせると、おおよそ史実に忠実な内容の様です。


 今でこそ、ロートレックの風貌や人柄を少なからず知っていますが、まだ名前くらいしか知らない頃は、ロートレック(アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック)という名前の響きに随分と紳士的なイメージを抱いていたのですが、写真(上)を見てそんなイメージは消し飛んでしまいました。写真を見て不思議に思われるかもしれません。子供の頃に誤って足を骨折してしまいそれ以降その足が成長する事はなかったそうです。原因は、両親の近親間の婚姻によるものだと言われています。

 フランスでも指折りの大富豪と知られていたトゥールーズ家の御曹司としてそれまで寵愛されてきたのが一変、その奇形から見放されてしまい、その後の活路を見出そうとした結果、画家になる事を決心します。ちなみにトゥールーズ家は絵の上手い家系だったことで知られています。


 パリに移り住んでやがて夜の歓楽にふけるようになります。よく....酒と女に溺れてゆくようになる....つまりこれが破滅型の画家の端的な表現ですが、個人的には「溺れた」という風にはあまり思えません。もちろん結果的にはアルコール中毒と梅毒により命を落とします。しかし、彼は大変な美食家だったといいますし、性欲が「人並みはずれて」旺盛だったと言われています。また自身の境遇に屈する事なくひょうきんで明るい性格だったとも言われます。そして言うまでもなく大富豪の生まれであるのです。それらから察するに、溺れた、堕ちた...というようなネガティブな風には感じられないのです。ほとんど無尽蔵にある財力を元に、「純粋に」 したいことをしたいままにしたまでのことで、その結果その止めども無い欲望に身体がついてゆけなかっただけなのだと...........そう思っています。なので彼がそれほど不幸だったとは思えないのです。それでも「破滅」はしていることには違いはないのかもしれませんが。

 この映画でも描かれている様に、シュザンヌ・ヴァラドンという一人の女性に愛されています。その関係は長くは続きませんでしたが、映画を見た限りでは幸福の時間であったに違いありません。その頃の場面がまたまぐわってるところばかりで、一瞬違う映画を見ているのかと思ってしまう感じでしたがw、満ち満ちる葡萄酒の様な雰囲気が感じられました。共寝して朝起きてxxx、朝ご飯食べてたらxxx、シュザンヌをモデルにして絵を描いていたらxxx、ワインを飲み交わしながらxxx............(*ノωノ)
 ついでに書いておくと、シュザンヌ役の女優がまためちゃめちゃ綺麗な上に身体も素敵で......実際のシュザンヌはどうっだったかは知らないけれど、ま、あれだったらああなってしまうのも当然です。w 


 「大きな注ぎ口のついたコーヒーポット」と自らをそう評していた様に、絶倫だったロートレックにとってシュザンヌひとりでは満足できなかった...と何かでそう書かれていたのですが(ソースは失念)、それのせいで娼館に入り浸っていったのだという推測もできます。また酒...とりわけアブサンの飲む量がしだいに増えていきます。アブサンというのは、麻薬性のあるアルコール度数の高い緑色の酒で、これで身を滅ぼした芸術家は多いです。ロートレックの他に画家ではモディリアニがアブサン漬けになっています。

 そんな荒廃し始めたロートレックに気性の激しいシュザンヌは怒り上がってしまって、もう大変。アトリエ内に並べられていた酒の瓶をなぎ倒し立て掛けてあったイーゼルをぶちこわしてアトリエ内はめちゃめちゃに.....。娼館に居すわっているのを察したシュザンヌが押し掛けて、「アンリ、出てこい!」なんて罵声をあげたや否や、「アンリをだせっ!」と、娼婦相手に詰め寄ったりで、もう迫力満点。w

 そんな争いもやがて終わりすっかり愛想を尽かしてシュザンヌはアトリエから出て行ってしまうのですが、それ以降ロートレックもすっかり娼館が住処になってしまいます。


 ロートレックと言えばムーランルージュ。ポスターを手掛けた事で有名ですね。素早く描写することに長けており、踊り子や娼婦の絵をたくさん残しています。時々、ルポタージュ的だとも言われる様に、当時の風俗を題材にしてありのままに描いたのですが、他の画家と違う点は同じ境遇の世界に浸りその中からの視線で描いているということだと思います。決して娼婦達を軽蔑することはなく、..........映画を見た限りでは、友達みたいな間柄の様。娼館での朝食で娼婦から「アンリ、ポテト食べてく?」なんて声かけられて、何十人も並ぶ長いテーブルに一緒に腰掛けて、食べている場面がありましたが、あれはちょっと異様というか可笑しかった。ひとりだけ背の低い男が入り交じってにこにこしながら食べているんだもの。と同時に妙に微笑ましくも感じるのでした。

 ただし、手持ちの画集の解説には、ロートレックがアルコール中毒になった理由として、毎晩その娼婦達から飲まされていた事が原因だと書かれています。当時、酒の量に応じた報酬でもあったので、できるだけたくさん飲ませてあとは外へ放り投げてタクシーへ送らせていた.....とか。なかなか強かで抜け目ないですね。

 ちなみに....娼館はかなり大きな建物で、1階が大広間で客が品定め(?)するための場所で、カンカンやったり踊ったりする所で、2階が個室になっています。前述の様に広い食堂はもちろん中庭なんかもあるような感じ(....だったはず...)。ロートレックが、閉ざされた空間内での共同体、女子修道院の様な場所であることに興味をそそられたという理由もあったようですが、確かにそういう雰囲気がありました。

 なるべく史実に基づいて映画化されていると思われますが、その中でも演出臭いなと思ったのは、いつもの様に部屋で娼婦(2人)を描いている最中に、いきなりある客が入ってきて、誰かと思いきやなんとロートレックの親父だったのです。お互いに気付いて親父は逃げようとするのですが、他の3人はやる気満々。「ベッドも2つあるし、しようしよう」なんて言ってるし.........。w 

 その辺りまでが楽しめますがそれ以降は、だんだん悲惨になってゆくので見ていて可哀想に思えてしまって......。梅毒感染されて、水銀注射されるし、アルコール中毒の悪化で譫妄(せんもう)状態に陥って精神病院に収容されてしまうし、どうにか退院でき家に帰ろうとするのかと思いきや、開口一番「ムーラン街へ!」なんだもん。もうほとんどヨロヨロ状態で歩行もおぼつかないのに、それでも笑顔で向かってしまうのを見ると、開き直っているのか、それともそれで楽しんでいるのか.......もうどうでもいいからとにかく欲望の果てまて突っ走る、って感じがして本人がそれを望んでいたならそれで良いけど見てる方は痛々しかったから心境は複雑です。


 最後の臨終の際の演出は史実通りか分かりませんが、遺体を運ぶ途中、道際から娼婦達が「バイバイ、アンリ」みたいなノリで笑顔で見送って終わりでした。ちょっと作ってる感じがしたのでいまいちでしたが、結局のところロートレックにとって見送られるにはあれが一番だったのかもしれません。


 そういえばこの映画で知ったのですが、ムーランルージュってとても明るい雰囲気なのですね。......それまでずっと、妖しくて暗い感じだと思っていたのですが全然違いました。「天国と地獄」をバックに大音量で流れる中、フレンチ・カンカンの華やかで(健全ではなく)健康そうな明るい妖しさが満ちあふれていました。

ARC :: Henri de Toulouse-Lautrec (1864-1901)
Musee Toulouse-Lautrec(トゥールーズ家の屋敷を改装して美術館してある)
MOULIN ROUGE (Site Officiel)ムーランルージュのオフィシャルサイト。今でも変わらず営業していて観光名所になっています。

左絵から順に、「Moulin Rouge」、「The Englishman at the Moulin Rouge」、「Woman with a Black Boa」。「Moulin Rouge」はロートレックと言えばまず引用される絵の1つ。このポスターは公開当時から好評でした。「The Englishman 〜」は、群馬県立美術館で「西洋の誘惑」展において展示されていました。石版画なのであちこちにあるようです。ちなみに展示のものは...確か三重県立美術館だったはず。 少ない線で表情や雰囲気を的確に表すのはさすが、ロートレック。モネ、ゴッホ、ドガ等と並んで日本の浮世絵に影響を受けたことが、平面的でシンプルな作風がポスターには打ってつけだったのでしょう。「Woman with a Black Boa」は、日本国内では検索してもヒットしなかったのでマイナーなのかな....。でも個人的にはここ最近お気に入りです。

 .........他にも好きな油彩画があるのですが紹介しきれない.......。ポスターが有名ですが、個人的には油彩画の方が好きです。顔の表情が独特なのです。どこか儚げで物憂い表情をしているのが多くて、それに....ロートレックの背が低いのが関係しているのか、肖像画などはこちらから見上げた様に描かれているものが見受けられます。そういうのが表情に表れているのかもしれません。今まで何度かロートレックの油彩画を間近で見た事がありますが、その展覧会のトリがモネやルノワールだろうと、自分にはロートレックの絵が一番輝いて目に飛び込んで来るのです。

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谷崎潤一郎「刺青・秘密」

  先日読み終えたドラキュラよりも前に読み終えていたのですが、谷崎潤一郎の作品にも嵌まりそうです。

 買う前までは、名前くらいしか知らず、何と言うか....敷居が高そうな気がして敬遠していました。自分には純文学のおもしろさが分からないのではないかと思う事がよくあって、それでも日本人として或る程度たしなんでおかないといけないとも感じているので、少しずつ手を伸ばしています。

 とりあえず代表作の中から選んで、タイトルで惹かれてこれを読んでみたのですが........これは.........嵌まるかも!

 「刺青(しせい)」は、ほんの20ページくらいしかない、とても短い作品なのですが、その中身がとても凝縮されたかの様な濃さなのです。

 簡単に言えば話の内容は、刺青を入れる際に悶える姿に快感を得ると言う刺青師が、自分の作品(刺青)が似合う女を探し続けてようやく見つけた吉原の遊女に半ば強引に入れるのですが、その遊女はその入れられた刺青によって本来の素性を覚醒し、それまでの刺青師との立場が逆転してしまい.....話の終わりに「…お前さんは真先に私の肥やしになったんだねえ」.....と女は言い放ち、男は「帰る前にもう一遍、その刺青を見せてくれ」と言い返すところを察するに、刺青師はその遊女の姿を前にして堕ちていったのでしょう。

 アマゾンのレビューや巻末の解説を見ると、サディズムとマゾヒズムの対照を描いているようなのですが、個人的には、この女は、いわゆるファムファタル的な存在のように思えました。


 そんな「刺青」の他に収録されている作品を読むと、どれも女が関わっている内容です。
gooの辞書で調べたら.......あぁなるほどやっぱりそういう作風なのですね....。

たにざき-じゅんいちろう ―じゆんいちらう 【谷崎潤一郎】
(1886-1965) 小説家。東京生まれ。東大中退。第二次「新思潮」同人。美や性に溺れる官能世界を描く唯美的な作家として文壇に登場。関西移住後、古典的日本的美意識を深め数々の名作を生んだ。代表作「刺青」「痴人の愛」「蓼喰ふ虫」「春琴抄」「細雪」「鍵」、現代語訳「源氏物語」など。
 
.....この「刺青・秘密」に「異端者の悲しみ」という、ほぼ事実に近いらしい自叙伝が収録されているのですが、その話の中では、友人から借りたお金でさえも遊びのために使い果たしてしまう程、遊蕩し放題です。(しかも貸してくれた友人は返してもらえないまま病気で急死してしまうし.....ひどい) おまけに少々マゾ気質があったようですし(巻末の注釈に記述してあるし、作品内でも書いてあるところからたぶんそうなのでしょう....)、その辺りを踏まえると何となくそういう作風になるのもうなずけます。

 「少年」という作品なんかは......ほとんどSMの女王様とその奴隷状態.........。おまけにスカトロぽいし。まあ、子供同士なので多少微笑ましい部分もあるのですが、「刺青」の様に、途中から立場が逆転して行為がエスカレートしていくのを読んでいくとちょっと鬱です。

 そんななか最後に収録されている、夢オチで終わる「母を乞うる記」は母を慕う優しげな作品で、しっかり終わりを締めている作品の選び方/並べ方も、この本は良く出て来ていると思います。

 それと........意外だったのがカバーデザイン。誰が手掛けていると思います? なんと加山又造なんですよ! 惜しくも亡くなられてしまいましたが、日本画家の巨匠でしたね。思えば、谷崎潤一郎と重なる作風がありますね.........。日本画といえば日本の自然の美を表現したものを思い浮かべますが、加山又造はもちろんそれらがメインだったでしょうが、意外な作品を以前、東京国立近代美術館で見た事があります。黒薔薇と白薔薇模様のレースを1枚羽織っただけの女性のヌード画です。2枚で1対になっているもので、大きさはよく憶えていないですが、等身大に近い大きさでした。......ヌードっていっても.......その.......ヘア付きなんです。えぇ?日本画で???.....って感じですが、事実です。でもまあそんなことはどうでも良い程、純粋に流麗で華やかさの或る絵でした。

 そう.........そんな作風でありながら谷崎潤一郎の文章表現も素晴らしいのです。2、3行に渡る長い文章が多いのが特徴だそうですが、そんなつらつらと流れる様な文章の中に、先ほどのgooの辞書に書かれてあった「古典的日本的美意識」が溢れています。

 源氏物語の現代語訳も有名だそうですが、もし源氏物語を読むとするならば、個人的には谷崎潤一郎のを読んでみたいです。以前、漫画家の江川達也のを買って読んだ事があるのですが(こちらは当然マンガ)、確かに内容に忠実に沿って描かれているのでしょうが、とにかくストレート過ぎると言うか.....悪く言うと下品過ぎて美麗な雰囲気が感じられずがっかりしてそれ以降買っていません。谷崎潤一郎が手掛けた源氏物語ならば、自分には読める気がします。

 巻末の解説で、「糜爛(びらん)の極致に達したデカダンスの芸術の好適例....」と永井荷風が絶賛したと書かれています。.........そうに違いありません。しかしまあ、いろいろ本を読みあさっていくうちに自然にゴシックやらデカダンスの辿りつくべき場所に辿り着いている事が、不思議な気がしてなりません。


 それと、なんかタイミングが良い事に、近々、「刺青」が映画化されるのだとか。
http://news.goo.ne.jp/news/sanspo/geino/20060120/120060120029.html
でも早速こんな批評が.....。
http://www.eiga-kawaraban.com/06/06011103.html


 書いていたら.....モローの刺青のサロメの絵が浮かんでしまいました.......。
躍るサロメ(通称:刺青のサロメ)

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 最後に書いたのはフェルメールとレンブラントがトリだった「ドレスデン国立博物館展」..........。

 振り返ってみれば、その後もけっこう美術館へ足を運んでいました。

フィリップス・コレクション展 / 六本木ヒルズ
ギュスターヴ・モロー展 / Bunkamura ザ・ミュージアム


レオノール・フィニ展 /群馬県立近代美術館(リンク先ページはBunkamura)


プーシキン美術館展 /東京都美術館
北斎展 /東京国立博物館


以上、5展。
フィリップスコレクションとモロー、プーシキンと北斎展、それぞれ同日に見ました。モロー展は公開初日でした。

...........1つだけ先に書いておきたい事。
モロー展で見かけたのですが..........UKゴスパンク風のいでたちの女のコが見に来ていたのですが、目立ち過ぎてた.....。
どういうわけか初日に来ていた人は中年以降が多くて若い人はほとんどいなかった中で、あれは目立ち過ぎてたけど.......個人的には「来る」と思っていたのであんまり驚かなかったけど........(*゚ー゚)bイイ  
 いや.....もっと凄い人が来るかと思っていたんだけど....あいにくそういう人は見かけなかった。
「わたしの肥やしになる男を捜しに来ました」みたいなヒト。w
 あれほどファムファタルを描いた画家は他にはいないし.......、ちょっとファムファタルとは意味合いが異なるけど、たぶんそういう人には打ってつけの絵画だと思います。w

† 00:28 | トラックバック | Topへ▲ †

これを書いたのは....8月だったから、6月末か7月辺りの話.....。


 ドレスデン国立博物館展。

これは先月見に行ってきたもので、昨日辺りまで開かれていた展示です。ドレスデン展とは言っても、結局はフェルメールの絵を見るのがお目当てなわけです。もちろん展示作品の大トリ的扱い。事前に調べたところではレンブラントの有名な「ガニュメデスの誘拐」をはじめとした絵画や、宝飾、陶磁器など、様々な作品が展示される、とのことでしたのでかなり期待していました。

............実際見てみると、正直言うと、あんまり惹かれるものがありませんでした。まずとにかく展示物の数が多くて1つ1つじっくり見る気が起きないのと、絵画以外の分野の展示物が、個人的には楽しめなかったこと、それとフェルメールの絵が見たくて仕方無かったので...........という感じで、コインや陶磁器辺りはあまりじっくり見ませんでした。この展示会に限らず、必ず見に行った展示会はカタログを買って帰るので、後はカタログを見ればいいかな....と思ってしまって.........。


博物館展でしたので、ある程度は、そういう工芸品なども展示されるのは承知していましたが、思っていた以上に数が多い上に、絵画でも知らない画家によるものも多かったので、ちょっと期待していたのとは違いました。それでも、細かい装飾が施された武器(斧、ピストル、剣など)は、目を見張るものがありました。実用されたものもあったようですが、とにかく装飾が凄いのです。これは装飾のネタになるなと思ってじっくり見ていました。 あとは.........宝飾。あんなにダイヤモンドの輝きが強烈だったとは今まで思いもしませんでした。本当に突き刺さる様な輝きなんですね.....。


 でもでも!やっぱりフェルメールの絵は素晴らしかったです。この1枚だけでも元はほとんど取った様なものです。今回展示されたのは、「窓辺で手紙を読む若い女」でした。以前見た、「画家のアトリエ」と比べると、多少粗い感じがしました。それでもあの何とも言えない空気感はありましたし、横顔で静かに俯く女性の姿が印象的でした。また、色彩も決して明るくはないトーンで柔らかい光が窓辺から差し込んでいる.....フェルメールの特徴ですが、本当、この光や空気の捉え方が凄いです。写実的ではありますが、他の写実的な絵とは明らかに異なる雰囲気です。
 しかも!!! フェルメールの絵なのに、手前に柵もなく、間近で見られたのが嬉しかったです。以前のは1mぐらい離されて分厚いガラスの奥に展示されていたのに........本当にこんな展示の仕方でいいの?...とこちらが心配になってしまうほどだったのに。


.........というわけで、展示数が非常に多かったので、全てをじっくり見る、というわけにはいきませんでしたが、見たいものは見られたし、見てきたので、もちろん満足でした。

† 06:18 | トラックバック | Topへ▲ †

 続いてラ・トゥール展。
実は、最近まで知らなかった画家です。日本にはかなり昔から展示されてきたことがあるようですし、全く知られていないわけではないのでしょうが、超有名というわけでもありませんよね....。しかし、海外ではフェルメールなどと並ぶ程、評価が高く、有名なのだそうです。

 そんなラ・トゥール。今後、まとまった数で展示される事はないだろう....とか囁かれていたので、それなら見なくちゃ!というわけで、見に行ってきたわけです。ラ・トゥールもラッキーな事に、テレビ(新日曜美術館)で取り上げていたのを見てから展示を見る事が出来たので、楽しめました。同日見たゴッホ展と比べると、物凄く空いていました。........まあ当たり前といえば当たり前ですよね....。でも見る側にしてみれば、空いている方が楽です。落ち着いてじっくり見られますから。

 展示室へ入ってびっくりしたのが、室内の暗さ。ゴッホ展のが明るかったせいもあるかもしれませんが、かなり暗いと感じました。さらにラ・トゥールが題材に取り上げたものが、暗い.....というか世俗的なものの中に潜む暗さ、みたいなのが多くて、そういう画風も相乗効果で、独特の雰囲気が出ていました。..........本当、ゴッホと比べると対照的かもしれません。

 その中で今回展示のトリ的な作品だったのが、「いかさま師」と「マグダラのマリア」でした。「いかさま師」ってタイトルも凄いですが、確かにいかさま師を描いています。カード(トランプ)をしているのですが、いかさま師が4人でグルになって、お坊ちゃんから巻き上げようという絵です。いかさま師の一人が、ひそかに背中にカードを隠しているところが描かれていたり、いかさま師のボスであろう女いかさま師が餌食のおぼっちゃんを見詰める表情、それとは対照的に嵌められている事に気付かないお坊ちゃんののほほんとした表情............それぞれ違った表情が描かれていて、なかなか面白い。

 「マグダラのマリア」は、少し前流行った(?)、ダヴィンチコードでよく取り上げられていた、マグダラのマリアです。イエスの母のマリアとは別の人物で、もともと娼婦だったのですが、イエスに悪霊を追い払ってもらって以来、信者になり、イエスの復活を最初に知ったのもこのマグダラのマリアであり、その際に「ノリ・メ・タンゲレ(私に触れるな)」と呼ばれた人で有名です。聖書に登場する人物なので、他の画家も多く取り上げているようですが、ラ・トゥールの描くマグダラのマリアは、かなりダークな雰囲気です。真っ暗な闇の中に小さなランプの灯で照らされていて、その表情も憂いのある様な、俯き加減で、何となく静寂感の漂う絵です。複数、マグダラのマリアを描いていて、今回展示されていませんでしたが、ドクロを抱えている絵もあるようです。.........ちなみドクロは悔悛の意味を表すもので、マグダラのマリアには必携のアイテムの如く、合わせて描かれる事が多いのだそうです。


 作品展数も少ないにも関わらず、かなりの数(とはいっても70点程だったと思います)が見られたというのは確かにラッキーなことなのかも。ちなみに、この展示が企画されたのも、西洋美術館がラ・トゥールの絵を購入した記念だったそうです。

 取りあげる題材や色彩などが、例えば印象派の様な綺麗な風景.....というようなものではないので、万人向けではない作風であることは確かでしょうが、他の画家があまり取り上げなかった俗っぽい世界を描いた絵は、何となく不思議な気にさせられました。

 そうそう..........ミュージアムショップでおもしろいグッズを見つけました。ラ・トゥールの描いた、マグダラのマリアには、ランタンを手にしている絵があるのですが、その描かれているものと良く似たデザインのランタンが売られていました。2種類あって、1つは銅製の小さなものと、もうひとつは鉄製の大きなもので、こちらの方が描かれているものによく似ていました。.............それで、なかなか気に入ったので買ってしまいました。家に帰った後、早速、窓辺に吊るし点火。.........久しぶりにロウソクの火を間近で見ましたが、なかなか風情があるものです。それからというもの時々点けています。...........真夜中の夜道を歩く時もこれを持ち歩けば危なくないね。w (.......却って危ない。w)

† 00:29 | トラックバック | Topへ▲ †

 書きそびれていた展示会のレポートをまとめておこうと思います。

ゴッホ展 (東京国立近代美術館)
ラ・トゥール展(国立西洋美術館)
ドレスデン展(国立西洋美術館)


 ゴッホ展とラ・トゥール展は、午前中にゴッホ、午後はラ・トゥール、と同じ日にまとめて見に行ってきました。........ちょうどゴールデンウィークの間に行ってきたので、もう3ヶ月も前になりますね。普段、日本画や日本の画家の絵を展示している、近代美術館でゴッホ展をやるというのが意外でしたが、美術館へたどり着くと.......凄い事になっていました。美術館の敷地内にひしめき合う人だかり。おまけに2階の方まで.........。G.W.期間に来たのが失敗だったとこの時気付きました。(遅かった...。) それで、まずチケットを買うためだけに並ばなくてはいけないのですが、なんと最後尾が2階のテラス。うそだろ〜、って思わず言いたくなる程でしたが、見ないで帰るわけにも行かず仕方無く2階へ昇り並ぶ事に。.........この混み振りは、以前、横浜美術館で見た東山魁夷以上です。.....異常です。20分くらいしてやっと地上に降り立つ事が出来たかと思ったら今度は迷路の様にくねくねと長い列が.........。しかもこの日は日差しが強くかなり暑かったので、じっと待つのがかなり応えました。その間、周りを眺めていたのですが、個人的な推測ですが、日頃、美術や絵画にさほど興味のない人がゴッホというビッグネームに引き寄せられて見に来た....という感じがしました。というのも家族連れがかなり多く、年齢層も偏りなく幅広い感じでしたので。それと.............まあ、周りから聞こえてくる会話を聞く限りでは、あんまり美術への知識がないようだったし.........。だからといってそれが悪いというわけではないですよ。念のため。(第一、自分だってろくに知らないのだし。)

 結局、チケットを買うまで40分くらい掛かったと思います。.........それだけ人がいるという事は当然館内も凄い事になっているわけです。ゴッホ展と名前が付いていますが、もちろん展示全ての絵画がゴッホであるはずがなく、ゴッホメインの後期印象派の展示という具合でした。なので、モネやセザンヌ、などもあるわけなのですが、なぜか.....というか当たり前なのか、ゴッホ以外の絵はみなスルーしてしまうんです。(ゴッホの絵の背後の壁には側に色がつけられていて遠くからでも識別可能でした) セザンヌなどの絵だってめちゃめちゃ素敵なのに..........。その代わり、ゴッホの作品、日本の錦絵を模写したものや、ちょっとしたデッサンまで、どの作品の前も動かない程混んでいるんです。なので、順番はあまり気にせず、空いているところから見る様にしました。

 しかしやっぱりゴッホの作品には本当に素晴らしいものがあるのも確か。展示物の中に、ゴッホが色の組み合わせを考える為に、さまざまな色の毛糸を組み合わせた毛糸玉があったのですが、これが意外でした。それまでゴッホというといかにも天才肌という感じで、色彩等全て感覚でやっているものだと思っていたのですが、そうではないのだそうです。日々、いろいろ試行錯誤していたそうで、あのゴッホ独特の鮮やかな色彩も、考え抜かれたもののようです。 本当は絵具で色彩を試したかった様なのですが、絵具を買うお金がなかったために毛糸で代用したそうです。その残された毛糸玉の色の組み合わせは、まさしく「種まく人」などの絵に描かれているものを同じ。薄紫色と黄色。赤と緑、青とオレンジ、いわゆる補色の関係にある色を組み合わせたものが多かったです。

 展示の中でトリともいえる、「種まく人」、「ひまわり」、「夜のカフェテラス」。確かこの3枚が並んで展示されていたと思いますが、とにかく圧巻。その展示室も超混雑。とにかく補色を意識した色彩の対比が見事で、あのうねるような筆致が間近で見ると本当に迫力があります。思った程、厚く塗られているわけではないのですが、生々しいタッチが拝めるのはやはり展示会ならでは、ですね。
 それらの晩年の作品はもちろん素晴らしいのですが、個人的には初期の、画家になろうと決心した頃に描かれたものも素敵でした。聖書や古靴、かなり暗いトーンで対照的な作品ですが、この重厚さが気に入ってしまいました。タッチも晩年とは異なる感じですが、それとは別に素晴らしい筆致なんです。


ちょうど見に行く前に、テレビでゴッホを取り上げた番組(新日曜美術館)や、BSで、かなり昔のものでしたが、ゴッホの生涯を綴った映画なども見たので予習ばっちりの状態で見られたので、あの混雑ぶりには参りましたが、とても充実した時間を過ごせました。...........ゴッホの生涯を知ってしまうと思わず同情してしまいます。生前に売れた絵はたった1点。耳切りや自殺などは有名ですが、他にもネタが尽きないほどいろいろあったりして、本当、報われない人生だったような気がして悔まれます。今日、沢山の人に愛されていることを知ったら、どう思うのでしょうね。

.............と、いろいろと書きたい事はあるのですがとりあえずこの辺りでやめにしておきます。

† 23:56 | トラックバック | Topへ▲ †

先週の「美の巨人たち」で取り上げていたのは...........山田かまち。
地元、群馬の人なので県民以外でどれくらい知名度があるのか分かりませんが、(って言ったって県民だって知らない人はいるでしょうが。)マイナーな存在には違いないはず。それに別に画家ではないですし。将来そうなっていたかもしれませんが...。

 美の巨人たち


 番組冒頭で、いきなりローカル臭さ100点の高崎駅前の映像が.......。 その後は、護国神社へ続く道が映って .....。いやあ、群馬テレビ(ローカル局です。県民でも見る人すごく少ない...はず)を見ているのかと思ったよ。w  確か広瀬画廊の近くに山田かまち水彩デッサン美術館があったような気がしますが、行ったのは随分前の事なので憶えていません。

 昔、親に連れられて見に行った事がありました。........ちょうどかまちが亡くなった歳と同じ位の時。 その頃絵画なんて全く興味がないし、はっきり言って連行されに行った様なものです。絵よりも飾られていたギターの方が気になって仕方無かった....という具合でしたし。なぜギターが飾られているかと言うと..........、晩年、ギターを弾くのに夢中になっていたのと、...........それで亡くなったからでしょう。この少年の名を知っている人はおそらく知っているはずですが、死因はそのギターによる感電でした。

 17歳による死、永遠に少年のままだから、そのことが同年代の人を惹き付けているのだと思います。館内に展示されているのは絵だけでなく詩も多いです。良く言えば青春の輝き、悪く言えば青臭さ.......、そんな雰囲気です。番組でも取り上げられていましたが、館内にはノートが置かれていて、びっしりと来館者のメッセージが書かれています。...............申し訳ないですが、そういうのはダメ.....なんです。来館したのは同年代だったにも関わらず、ああいうのは受け入れられませんでした。前述の、青臭さで充満しているように見えて、ひどくつまらなかったんです。すごく好きだと言う人ももちろんいるでしょうしそれを否定することはしません。好みの問題であれは受け入れられなかった、ということです。

 実際、飾られている絵は、上手いと思います。子供の頃描いた動物の絵は特に上手いと思いました。各々の動物の雰囲気をよく捉えた色彩、動きのある線、..........番組でも同じ事を館長がおっしゃっていましたが、やっぱりそこが特筆すべき点なのでしょうね。(番組内では語られていませんでしたが、確か、井上房一朗もその才能を高く評価していたとか訊いた事があります。井上房一朗というのは、地元群馬の中堅ゼネコンの社長だった人ですが、いわゆるパトロンでもありました。)  とはいえ、あの美術館は、純粋に絵を見るということではなく、たぶん、瑞々しい青春の輝きを見てほしいのだと思います。


 館内2階(だったと思う)にはギターの側に氷室京介のメッセージが飾られています。なぜかというと、当時かまちと友達だったようで、一緒に集まってギターを弾いていたりしていたとか。............生きていたならどうなっていたのでしょうね。晩年は本当にギターにのめり込んでいたそうで、自作曲の譜面も発見されているんですよね。確か、世界に通用する音楽を演る、とか言っていたそう..........。絵もうまいし、きっと音楽にもその才能はあったはず。.........そう思うととても残念です。生きていたらもっと有名になっていそうな気がします。

 ちなみにかまちのギターは、確かグレコのストラトだったはず。ナチュラルフィニッシュのもので、そういえば最近はあんまり見かけない仕様かも。当時、フェンダーやギブソンは高嶺の花だったので、国産のコピーモデルがポピュラーだったようですが、中でもグレコのはクオリティが高かった..........とか。目の付けどころが鋭いかも。


 余談ですが、かまちのギターによる感電死のせいで、ギターを買うのをためらった過去があります。 本人には申し訳ないですが、本来、ギターによる感電死はありえないはず。確か、ケーブルが短いとかで2本のケーブルを強引に繋ぎ合わせた、線がむき出しになった部分が、真夏の暑さで汗だくになっていた体に触れて感電だったとか..............。

† 22:53 | トラックバック | Topへ▲ †

 先々週の「美の巨人たち」では、天才技師ギュスターヴ・エッフェルによるエッフェル塔を1時間スペシャルで取り上げていました。......もう感激です!  というのも、あのエッフェル塔、実はフランスにおけるゴシックリヴァイヴァルの具体化として傑作の建築だからです。

 ゴシックという文化は、12世紀あたりから14世紀辺りに最も栄えた文化ですが、その後ルネサンスに移り変わりゴシックは衰退していくのですが、1750年、イギリスのストロベリー・ヒルにゴシック風の館が建てられたのを機に、徐々にフランスやドイツなどで、再びゴシックが持てはやされる様になるんです。これをゴシックの復興ということで、「ゴシック・リヴァイヴァル」と呼ばれたりします。

 フランスのゴシックリヴァイバルに貢献した人物と言えば、やはり「ヴィオレ・ル・デュック」でしょう。この人物は、パリ大聖堂(ノートルダム大聖堂)のステンドグラスの修復など行ったのですが、彼は単にかつてのゴシックの模倣に止まる様な事はせず、当時のゴシックの理念を継承し新たに建造する事が目的だった様です。

 産業革命と共に現れた新たな建材である、鉄、ガラス、コンクリートの中の、最も力学の構造が鮮明に現れる鉄を、ヴィオレ・ル・デュックは特に注目していました。エッフェエル塔の設計はエッフェル......だと思っていたのですが、厳密に言うと彼ではないそうです。エッフェルの建設会社に勤めていた社員二人によるアイデアとその社員の上司である建築家のステファン・ソヴェストルが手直しして作られたものなのだそうです。このステファン・ソヴェストルという建築家は、ヴィオレ・ル・デュックの理念を継承する建築家グループに加わり、1878年のパリ万博で、鉄骨による建築物を展示していた人物でもあるそうです。

 まあ、そんなうんちくは抜きにして、エッフェル塔は緩やかな曲線とは裏腹に内部に張り巡られた無数の鉄のフレームの組み合わせが何とも言えないかっこよさ! 鉄材を留めるリベットがあたかも中世ゴシック大聖堂の表面を飾る突起物で、無数のフレームがリヴ・ヴォールトのように思い起こさせてくれたりして、ホント、ゴシックリヴァイヴァルの化身って感じがします。東京タワーと同じ様なものかと思っていたのですが、構造が違う感じ。それにフレームのデザインも異なるし、なにより色が違う! くすんだ赤茶色というか焦げ茶色というか.....ダークな色彩が、これまた(^∀^)イイ


 番組内では、特にゴシックリヴァイヴァルやヴィオレ・ル・デュックうんぬんの話は出てこなかったのですが、代わりに知らないネタを拝められたので満足です。(^∀^)

あとのネタはこちらでどうぞ。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/picture/050319.htm


 余談ですが、先週は、大好きなロートレックでした。最近の「美の巨人たち」は知らないものが多く個人的な好みではないものが多かったので少し退屈だったのですが、2週続けて大満足!!! (^∀^)

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