Diary of a Madman

癲狂院に置かれた或る一冊のノートブック
狂気の記憶が焼き付いた、深淵なる倒錯の記録の数々。
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睡蓮燕子花図

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 なんとか作り終えました。
当初は去年ほどではないものの、よくある油彩画の風景画みたいなものにしようと思っていたのですが、今回は時間が本当になかったので、とにかく短時間で作れる画風のものを、と考えました。前に、去年はモネ風だったから今年は山水画みたいなのでどう? と言われたことがあったので、和風のものの方がいいかなと思い、そうなれば短時間で描ける→絵が単純化されている→琳派......ということで琳派風にすることにしました。


 琳派をご存知の方ならば、言われなくとも絵を見てすぐにわかると思います。琳派といえば尾形光琳や俵屋宗達が有名です。琳派とは宗達光琳派ですね。俵屋宗達は正確な生没年や詳しい人物像なども未だに分かっていない、謎な画家のひとりですが、おそらく安土桃山時代の末から江戸初期にかけて生きた画家であろうといわれています。光琳は江戸中期、このふたりが琳派のオーソリティとして、元々は京都に興った芸術でしたが19世紀以降は次第に江戸へと移り、酒井抱一や鈴木其一などが活躍し、これらを江戸琳派と呼んだりもします。

琳派は、絵画のみならず工芸品にまで広く範囲を広げ、絵を様々な媒体へ活かすために、使われるモチーフをパターン化している点などに気づかされます。光琳は有名な「燕子花屏風」で型紙を使って....今で言えばコピペですね.....燕子花のモチーフをシンプルながらそれを反復させ、リズム感のある配置、大胆に余白を活かした空間、そんなところが個人的には好きです。


 光琳や宗達も好きですが、以前、琳派展を見にいって、酒井抱一や鈴木其一の絵にいたく感激しました。先述の通り江戸琳派のカテゴリーに入る画家です。何というか叙情的で、どこか瑞々しさを感じさせる.....そんなところが好きです。


 さて、そんな先人たちの絵を参考に、絵を描いてみました。琳派の絵にはスイレンは描かれていないモチーフだと思いますが、この平面的で、単なる円形であるスイレンの葉を活かすには、やはり単純ゆえにパターン化して絵に流れとリズムを生み出すのが良いと思い、手前から二手に分かれ、やや右斜め上へゆるやかにうねるような流れを感じさせるようにスイレンの葉を配置してみました。その際に、葉の大きさと葉の切れ目を上手く配置し、重複しないように気をつけ、流れのポイントとなる箇所にはやや大きめの葉を置いてみました。

 モネのスイレン画で、水面に映る風景が素敵なので、最初からそうしようと考えていました。実際、限られたスペースでたくさん描くには、同じ方向から描くよりも上下それぞれに描く方が隠れずに掛けますし、空間も活かせます。琳派ではそういう水面に映るような絵はないと思うので、なかなかよいアイデアではないかと思っています。

それで、水面に映る植物は特に決めておらず単にアシのような植物を描いておけば良いや、なんて安易に考えていたのですが、それではどうもいまくいかない。単に風景を写しているだけのように思われてしまって、どうもかっこわるい。これならいっそスイレンのみにしようかとも考えました。大胆に余白を活かすことも琳派の特徴ですから。でも大きな屏風ならともかくハガキ大にスイレンの葉だけというのは、ちょっと物足りないように思われて.........琳派の画家がこぞってモチーフにした燕子花を描いてみることにしました。

 燕子花は花をネットで調べた程度であとは好き勝手に描きました。葉茎の部分は燕子花のそれではないと思います。でもそれでもいいんです。今回は現実に似ていなくても似合ってさえすればそれでOKにすることにしました。燕子花の花も単純化させてそれを1つ1つ部分的に変化させています。


 制作に使ったソフトは.......「Expression」というソフトにいつもの「Photoshop Elements」、それに「Fireworks」です。「Expression」というのは実は無料のソフトです。バージョンが上がるにつれ販売メーカーが変わり、現在はマイクロソフトだったと思いますが、どういうわけかバージョン3のものを無料で公開しています。それを知ったのは1年くらい前で落としてみたもののこれといって使っていませんでした。イラストレーター系のドローソフトです。フリーでも描けますがベジェやスプラインで描いていくあれです。

 今回は制作のほとんどをそのExpressionで作りました。燕子花の花とスイレンの葉の塗りをPhotoshopで、ExpressionからPhotoshopへ出力できなくて困っていたのですが、試しにFireworksで開いてみたらエラーもなく再現されたのでほっとしました。Fireworksは塗りの後、文字入れで再度使いました。何かと柔軟にサポートしてくれるFireworksは頼りになります。ちなみにバージョンは4。何年前のだ。w

 塗りは案外らくにできました。スイレン葉は、ブラシを「ドライブラシ(散布)」か何かを選んでExpressionでべた塗りしてあったうぐいす色の下地の上から暗赤紫色で一度フチを中心に塗り、その後部分的に濃い緑色で塗りました。本当はその後、影や立体的に感じさせる塗りをしてみたのですが、画風に合わず結局使いませんでした。今回はとにかく平面的。影はなし。でもそれがいい感じです。

背景は屏風にあるような箔が貼られているものにしてみました。群青色や黒などを制作途中に試してみたりしましたが、琳派の絵を見ていて気づいたのですが、シンプルな絵なだけに背景が複雑なテクスチャをしていたほうが、それが対比となって良いコントラストになるのではないかと思い、琳派に倣いました。ただし喪中用なので金箔は無理ですから銀箔にしました。去年のイノシシの年賀状もそうでしたが背景は素材に頼るのもよいかもしれません。


 宛名面はおまけ。
通信面が水面に映る上下反転絵なら表は逆にして背景にしてみようとアイデアが浮かび、印刷がその分面倒でしたが、その甲斐はあったと思います。


 個人的にはとても気に入っています。久々に思い描いた通りのものが出来ました。........でも.....技術的には相変わらず中学1年生レベル..............。こんなのを使って親の面目は立つのかどうか......心配です。だいたい去年も描き終わってから気づきましたが、歴史に名を残す大家に倣おうとすること自体、甚だしく無謀なのです。モネを降臨させようと思ったら光琳を降臨させてしまったとか、そんな寒いオチもこの出来映えだったら恥ずかし気もなく言えそうです。w

 だって今回は時間を掛けなかったのはもとより、使ったソフトは無料ソフト、タブレットも必要ない描き方................手を抜いたわけではないのですが、絵を描くことに対してナメ過ぎです。だからいつまでたってもろくな絵が描けないのだと思います。・゚・(ノД`)・゚・シクシク

 というわけなので、まさかとは思いますが.............喪中用などに使わないでくださいね。素材ではありませんので。


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