Diary of a Madman

癲狂院に置かれた或る一冊のノートブック
狂気の記憶が焼き付いた、深淵なる倒錯の記録の数々。
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東山魁夷展。

 2/1に東山魁夷展が開かれている横浜美術館へ行ってきました。

 東山魁夷(ひがしやま かいい←名前がカッコよすぎ!)といえば、..........おそらく、日本で一番有名で人気もあり、「最も日本を代表する画家」といっても言い過ぎではない程、日本画の巨匠でしょう。1999年に90歳で亡くなられましたが、その長い生涯に渡って描かれた膨大な作品の中から今回は初期から最晩年のものまで多岐に渡る展示となっており、代表作ももちろん展示してあり、中でも、唐招提寺御影堂(みえいどう)の障壁画、「ふすま」に絵を描いたものですが、今回はそれをなんとわざわざ横浜美術館にまで運び、一部ですが再現されています。
 東山魁夷の絵は.........風景画がほとんどで、普通はカンバスに油絵具という画材でしょうが、魁夷の場合は和紙に岩絵具という組合せで描いています。..........なんて書くと、見たことがない方は、すごく古風な絵だと思われるかもしれませんが、それは違います。誤解を恐れずに敢えて言えば、和洋折衷、日本画に洋画のエッセンスを持ち込んだ画風、だと思います。
 油絵具とは違う岩絵具の質感が、見る人にしつこくなく、さらっとしていて画風と共に清涼感をほのかに感じます。また角度を変えて見ると、微妙な岩肌のような凹凸感、そして時折キラキラと光る具合が、良い感じです。

 そして、肝心の内容ですが、もうなんといってよいやら.......。
絶句です。大きな絵を描くのが好みだったのか、展示されている全ての絵が巨大で、まずその大きさに圧倒されてしまい、そして自然と大気の質感を幻想的な演出で描かれた風景......素晴らしい!! あの人は、間違いなく、自然や大気の色を知っている人だ!と感じました。あぁ、本当に素晴らしい.....。見たことがない方は絶対見ておくべき絵です。おそらく誰が見ても素晴らしいと思える絵です。印象派の絵が人気があるのと同じく、とても表現していることが分かりやすい画風だと思うし(いや、印象派よりも分かりやすいと思う。一目見て、キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!って感じだから。)、実際、多くの人に愛されているのが、それを証明しています。


 個人的に好きなのは、やっぱり「白馬の森」。
これが見たくて見たくてこの絵の前にしばらく立ち尽くしていた程です。あの、群青色に彩られた森の中に、うっすらと現れた一頭の馬。静寂に包まれた幻想の世界にもう感動......。魁夷の絵には岩絵具の関係か青色や緑色を多く使ったものが多いです。しかも落ち着いた色彩で、この辺りも「癒される」絵の一因となっているのかもしれません。

 「花明かり」
これもすばらしい。
月夜に大きな桜の木が描かれていて、絵の中央にどっしりと構え高く聳えようとする、生命感溢れる感じに圧倒。そして何よりも流麗。.....花見の桜よりも...きっと綺麗です。

 「冬華」
モノトーンの色彩で描かれた、冬景色。
ここにも満月が昇り、その下で大木がそびえています。日本画だけど、澄み切った、ヨーロピアンの雰囲気がする、絶妙な画風が神妙! くどいですが、素晴らしいです。そういえば月の描かれたものや、それを湖面に写した絵も多いです。

 「雪の城」
これもまた魁夷がたびたび訪れた北欧風の絵で、遠くにお城が、手前に雪の積もった木々が描かれているのですが、その雪の雰囲気と言ったらもう! .....本当に自然の美しさを知っている人なんだと....思ってしまいます。

 あとは......やはり「道」。
「道」は魁夷の代表作中の代表作だと思いますが、一筋の道が大きく描かれているだけですが、道=人生に置き換えた、その奥深さと、魁夷が次々と家族を亡くした辛い過去......そしてその後の希望に馳せる意気込み......そんなのがにじみ出ているような感じです。


 そして最後を締めくくったのが、唐招提寺御影堂の障壁画。
それまで見てきた絵も巨大で圧倒されっぱなしでしたが、この障壁画は......それをさらに上回る迫力。
ふすま14枚程にず〜〜〜〜〜〜っと描かれた「濤声」。
 .................。
もう本当に凄いというしか他にありません。実際に見てほしいです。
「濤声」の他に、「桂林月宵」、「揚州薫風」、「黄山暁雲」、「山雲」が実際に部屋の一部を同じ様に再現して展示されていますが、本当に見る価値があります。奈良の唐招提寺へ行ってもいつでも見られる絵ではないと思うし.......貴重です!

 この東山魁夷展は、横浜美術館では今月2/24まで。ちなみに、前期と後期に別れて絵の展示替えがありまして、前期は2/4まででした。それで、作品一覧表を見てみると、障壁画や「道」などの代表作十数点を除いてほとんどがごっそり替えられるようで、後期もすごく見たいです。見終わった後にカタログ(これが値段\2,500の割にすごくよい作りで......買うべし!)を当然買ったのですが、それを見ていたら、実際に見てみたくなってしまって。はっきりいって全部見たいのです! 横浜美術館の他に、(魁夷の生まれは横浜、育ったのが神戸にちなんで、らしい)神戸にある、兵庫県立美術館でも開催されるようで、そちらでしか見られない絵もいくつかあって(もちろん横浜でしか見られないものもありますが)悔しい。珍しい自画像は神戸のみ......。ぅぅ。


 本当..........あっという間でしたが、見終わって出てきたら、なんだかんだいって4時間ほど経っていました。

 最後にもうひとつだけ付け加えておくと、この日2/1、美術館に着いたのが午前10時半くらいだったのに、美術館の前ですごい行列.....。見る前から圧倒されました。そしてその人気ぶりを実感させられました。アナウンスがあって、チケット買うのに「70分待ち?」.......。 美術館の端から端まで並んで、その端で折り返してさらにまた長い列があり、ようやく館内に入ることができて、館内からチケット売り場までまた長い列......。結局70分も待たされることはなくおおよそ30分ほどでチケットを買えましたが、館内もすごい人の数。終始、絵の方に出来るだけしっかりくっついて見ていました。そうでないと、人波に流されていってしまうし、絵がよく見られないので。 見終わった時はすでに3時を過ぎていましたが、それでも相変わらず長い列が出来ていました。(さすがに折り返す程ではありませんでしたが。)

 しかし横浜まで出かけて、チケット買うのに待たされて、館内ぎゅうずめでも.......充分に見る価値はあったと断言できます。

img 端から端まで人がずら〜〜〜っ。実際にはまだ左右に列を作っていました。中央が玄関なのですが、一度端まで行って折り返さないとそこまでいけない程の行列。 

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